2008年4月、プレイステーション３で発売されるや絶大なる人気と支持を誇ったアクティブシミュレーションRPG『戦場のヴァルキュリア』。2009年4月のTVアニメ―ション放映を控え、ゲーム版のディレクターを務めた田中俊太郎氏とアニメーション版の監督を務める山本靖貴氏へのインタビューを3回にわたってお届けする。
最終回である今回は、アニメーション版『戦場のヴァルキュリア』のオリジナル要素と、原作者からアニメーションスタッフに託された想いについて伺った。

――アニメーションオリジナルの設定はセガで監修されたのでしょうか？

田中：そうですね。こういう設定を作りたいとこちらからお願いしたこともありますし、アニメーションのスタッフからオリジナルのものを出したいというお話しを頂いて、監修したものもあります。オリジナルキャラクターもそうです。たとえば、マクシミリアンの父親である帝国皇帝は、ゲームではまったく描かれなかったのですが、なぜマクシミリアンがこういう行動に走ったかなどは、アニメーション版で描かれることになっています。その際に登場するキャラクターや、ゲームでは描かれなかった部分で新たに必要となるものは、セガで監修をしています。

――連邦側は描かれるのでしょうか？

田中：連邦側も登場するのですが、ガリアと帝国がメインとなってストーリーが進行しますので大きく描かれることはありません。

――ゲーム中では、イベントとしてしか登場しませんでしたが、戦車による大規模な会戦は描かれるのでしょうか？

山本：そこは外せないところで、ストーリー上ナジアル平原の戦いがありますから、戦車での大規模な戦いを描きたいと思っています。戦闘に注力するあまりお話が忘れられてしまうと、それはそれでつまらなくなってしまうので、どこまで描くかは考えないといけませんが。シリーズ構成的には後半の山場になりますし、そこまで体力を温存してCGのチームにはあたってもらいたいですね。

田中：大規模会戦以外にも、帝国軍の歩兵が戦車を連れて丘の向こうから進軍してくるシーンであるとか序盤から戦車戦の見所があります。ゲームだとどうしても１ユニットずつしか動かせないのですが、アニメーションだと複数の戦車がフォーメーションを組んで進行してくるシーンなどが描けますから。そういうところはコンテで見ていてもワクワクしますね。

――シリーズ構成的にはどのようにされるのでしょう？

山本：構成は概ね固まっていて、最後をどういう風に盛り上げるかはこれからの流れで決めていきたいと考えています。ゲームそのままの流れで作ってしまうとどうしても戦闘が多くなってしまいますので、ここは日常芝居にもって行きたいというところは構成を変えています。ゲームとアニメーションでは方法論が違いますので。どちらかというと、キャラクターのドラマを中心に見せていくということがメインになります。ですから、戦闘はゲームより比重が軽くなっていますね。その分、ドラマが盛り上がる形です。

――物語として、帝国の侵攻の序盤は描かれないのでしょうか？

田中：アニメーションのスタートもゲームと同じで、ウェルキンの帰郷から始まりますが、自警団の面々の話や状況の説明が、物語の端々で語られるようになっています。

――原作側からご覧になられてアニメーション版のキャラクターデザインはいかがでしょう？

田中：当たり前のことなのですが、ゲーム、コミック、アニメーションと描かれる方によってタッチが異なりますから、そういった部分を我々は逆に楽しみにしています。そして、女性キャラクターはとても可愛く描かれていると思ってます。キャラクターデザインも渡辺敦子さんと女性の方ですし、特に女性の視聴者の方が入りやすいようにと、ゲーム版とはまた異なる配慮をされていらっしゃいますよね。

山本：アニメーション版で女性のファンが増えてくれると嬉しいです。

――山本監督は初監督作品になる訳ですが、本作への抱負をお聞かせください。

山本：面白いものに出来るという自信を持って言えるほど良い流れで制作出来ていまして、ゲームのユーザーだけでなく、幅広い層が楽しめるものにしたいと思ってます。何年たっても「あれは面白かった」と言ってもらえるような作品にしたいですね。

――ゲームでは「受け継がれる想い」というテーマがありましたが、原作側からアニメーションのスタッフに託したい想いがあればお願い致します。

田中：ゲームでも、「人を経て受け継がれていくもので世の中が出来上がっている」ということを描きましたが、おかげさまで『戦場のヴァルキュリア』もゲームから始まって、コミック、アニメ…と、さまざまな方面に広がっています。そういう中で、アニメーションスタッフの皆さんには新しい『ヴァルキュリア』を作ってもらいたいと思っています。もちろん世界観を合わせようと我々も設定など監修していますが、時には観客の立場で「これ面白いな」と絵コンテをチェックしたりしています。一流のスタッフで新しい『ヴァルキュリア』が紡がれていくのを楽しみにしています。これが嚆矢となって、ゲームファン以外の新しい人に『戦場のヴァルキュリア』が受け継がれていくと嬉しいですね。