INTERVIEW Vol.3 ゲーム版キャラクター原案 本庄雷太 × アニメ版キャラクターデザイン 渡辺敦子
現在好評放送中のTVアニメーション『戦場のヴァルキュリア』。今回はゲーム版のキャラクター原案を担当された本庄雷太氏とアニメーション版のキャラクターデザインを担当された渡辺敦子氏の対談を3回に分けてお送りする。ベースとなったゲーム版のキャラクターがどのようにデザインされ、また、それがアニメーション版ではどのようにアレンジされたのか、第1回目である今回は、デザインに至るまでの経緯などについてお伺いした。
――どういう経緯でアニメーション版『戦場のヴァルキュリア』のキャラクターデザインを担当されたのでしょうか。
渡辺敦子(以下渡辺):A-1 Picturesのプロデューサーに「絵を描かないか」とお話を頂いたのが最初です。
――ゲームをご覧になっていかがでしたか。
渡辺:ゲームが難しくて進められませんでしたので、プレイしている映像を頂いたのですが、ものすごく絵が奇麗だというのが最初の印象です。
――普段からゲームはプレイされるのでしょうか。
渡辺:RPGをよくプレイします。
――本庄さんに質問ですが、アニメーション版のキャラクターをご覧になっていかがだったでしょうか。
本庄雷太(以下本庄):初めはウェルキンやファルディオが少女漫画っぽいなぁと思いましたが、動くとかっこ良かったですね。それと、かなり線が間引かれてシンプルになったなぁと思いました。これは申し訳ないんですが、僕の絵だとアニメーションでは動かせないみたいです。線が多すぎて……。本当に申し訳ないなと。
渡辺:こちらこそ元の絵で動かせるといいんですが、そうすると死人が出てしまいますので(笑)。
――デザインに関して注文は出されたのでしょうか。
本庄:特に出していません。アニメーション版は完全に視聴者目線で毎週楽しんで観ています。ゲームの3DCGでは、表情をつけるのが苦手らしくて、どうしても表情が固かったのが、アニメーション版では、生き生きとした表情をしているのが印象的でした。
渡辺:逆に私は、ゲームでもこんなに表現できるんだと驚きました。
――監督からオーダーされたことはありますか。
渡辺:表情を豊かにしていますね。崩し顔も多くしています。
本庄:拝見してみて、ゲームではこの表情はできないなぁと思いました(笑)。
渡辺:崩し顔のオーダーを頂いたんですが、どこまでやってよいかわからなくて、A-1の加藤プロデューサーに「こんなに崩していいのですか」と電話したのを覚えています(笑)。
本庄:もっともっとお願いします(笑)。
渡辺:特にやってはいけないと言われることもなく、かなり自由にデザインさせて頂いています。さすがにキャラクターからあまりはみ出してしまうのはまずいですが、キャラクターの範囲内であればかなりいろいろやっています。
――アリシアが一番表情豊かですね。
渡辺:そうですね、登場シーンが多いので。ほかにもエレットなんかもかなり表情豊かです。監督から、「男性キャラクターはかっこよくお願いします」って百回くらいいわれたので、男性キャラクターはかっこいい表情が多いですね。
――お二人に質問ですが、一番デザインしやすかったキャラクターと、しにくかったキャラクターは誰でしょう。
本庄:一番デザインしやすかったのはイサラ、しにくかったのがアリシアですね。アリシアは、最終的に赤い三角頭巾に落ち着くんですが、そこに至るまでにリボンをつけたり、羽を付けたりいろいろ試行錯誤しました。ゲームでは胸から上が一番表示されることが多いわけですが、ヒロインですから、そこにわかりやすいアイキャッチを置こうということで苦労しました。あまりゴテゴテしても仕方ないし、セガの社内デザイナーの方に意見を頂きながら、いろいろコンペをしました。20種類くらい並べて、「これがいいんじゃないか」というようなことをやりました。
渡辺:アリシアに関しては最初に着手したのですが、みなさんの理想論があるので、いろいろな意見を聞きつつデザインしました。思い入れも強いキャラクターなので、皆さんにいろいろリテイクを頂きながら描きましたね。でも一番大変だったのは実はハンスです(笑)。
――ハンスがなぜこのデザインになったかは紛糾してますよね。
本庄:羽が生えたのは僕のせいではありません(笑)。僕が最初にデザインしたときには羽はなくて、気がついたら羽があって……(笑)。
渡辺:私が大変だったのは、もっとかわいくしてくれと言われて。ここに至るまでに五、六稿重ねているんですが、そのために描きあがるのも遅くて、「まだですか」と言われ続けていました(笑)。
――デザインしやすかったと仰ったイサラのデザインについてお願いいたします。
本庄:2パターン作ったんですが、こちらで決まるだろうということは確信してました。このビジュアルで妹ですから、正直にキャラメイクすれば引っ込み思案で守ってもらうというのがテンプレートなのですが、イサラはそうではなくて、しっかり者で万能キャラになりましたね。
渡辺:私は最初に本庄さんのデザインを見たときにすごいと思いました。趣味が見えるなぁ(笑)と。