INTERVIEW Vol.1 セガ PS3『戦場のヴァルキュリア』ディレクター田中俊太郎 x TVアニメ『戦場のヴァルキュリア』監督 山本靖貴
2008年4月、プレイステーション3で発売されるや絶大なる人気と支持を誇ったアクティブシミュレーションRPG『戦場のヴァルキュリア』。2009年4月のTVアニメ―ション放映を控え、ゲーム版のディレクターを務めた田中俊太郎氏とアニメーション版の監督を務める山本靖貴氏へのインタビューを3回にわたってお届けする。
第2回は、アニメーション版『戦場のヴァルキュリア』は、ゲーム版『戦場のヴァルキュリア』から何を受け継ぎ、そして何を変えていくのかを伺いした。
――第7小隊は補充兵に至るまで全て登場するのでしょうか?
山本:全員は……。
田中:補充兵は全員で50人程いますから……(笑)。ただし、かなりの人数が登場します。人気のあるキャラクターは一通り登場しますね。
山本:そうですね、第7小隊は個性派揃いなので。こんな人たちで大丈夫なのか思っているんですが(笑)、ウェルキンの第7小隊とファルディオの第1小隊をメインに、要所要所で補充兵を登場させようかと考えています。
田中:ダウンロードコンテンツに登場したキャラクターは無論、それ以外のキャラクターも登場して、日常の中に、彼らとウェルキンやアリシアが会話するシーンも出てきます。ゲームの中では描かれませんが、そういった部分はアニメーションならではのお話になるかと思います。それと、ゲーム版では、アリシア、イサラ、ロージーだけがスカートを履いていましたが、アニメーション版では補充兵もスカートを履いていましたね(笑)。
山本:基本はスカートで、ボーイッシュなキャラクターは半ズボンにしてます。
田中:マリーナは半ズボン、イーディーはスカートでしたね。そういった差異はゲームファンのみならず嬉しい変更だと思います(笑)。
――敵のエースは登場するのでしょうか?
田中:全員登場するわけではありませんが、ダウンロードコンテンツにセルベリアと一緒に登場した“彼”は出てくるようです。しかも、ちょっとだけ登場するのではなくて、しっかりお話に絡んできますので、ゲームをプレイされた方はニヤリとするところもあるかと思います。
――アニメーション版では帝国側のエピソードも描かれるのでしょうか?
山本:帝国側もお話を描かないと感情移入できませんから。基本的にはガリア側の視点で進むのですが、帝国側にもオリジナルエピソードがあります。アニメーション版ではもっとマクシミリアンたちキャラクターのエピソードを掘り下げて、膨らんで魅力あるキャラクターになっています。
田中:イェーガーが女遊びしてるシーンがありまして、こういったものはゲームではなかなか出来ない描写ですからとても良いと思います。
山本:ゲームだと、帝国側はウェルキンたち以上に生活感がないのです。そういう意味では、彼らの意外な一面が見えると思います。
山本:そして、今回はグレゴールが活躍します(笑)。
山本:序盤はグレゴールがいちばん登場しますね。
田中:しかも強いです。ゲームだと三将軍(ドライ・シュテルン)の中ではいちばんあっさりと倒されてしまうのですが(笑)。
――アニメのオリジナルキャラクターや、オリジナル兵器は出てくるのでしょうか?
田中:オリジナルキャラクターも随所に出てきます。ファルディオの率いる第1小隊はゲームに登場した補充兵たち、そしてアニメ版オリジナルキャラクターで構成されているようです。
山本:オリジナルのメカニックは、実はあまり出てきません。沢山出すとややこしくなってしまいますので(笑)。メカニック関係はシンプルにしています。
田中:ただ、自警団が戦車に乗っていたり、ゲームとは違う兵器展開がありますよね。オリジナルキャラクターも出てきますが、配役も変わっている部分がありまして、1話だと、スージーが自警団にいたり。異なる設定で登場するキャラクターもいるようです。
山本:そうですね、ゲーム中には登場しないキャラクターも沢山出てきます。
――ゲームでは識別性の問題から帝国兵は赤く配色されていますが、これは踏襲されますか?
山本:そうですね。国旗を見るとガリアが青で、帝国が赤ですから。あとは、戦略マップでは、分かりやすく青と赤という色使いをそのまま使っています。ただ、帝国兵の色は赤ではなくなっています。そうしてしまうことでアニメーション的に特別な意味を持ってしまいますので。
田中:ゲーム的な識別性とアニメーションのお芝居だと意味合いが異なりますから。
――制服は特には変えられないのでしょうか?
山本:制服のデザインはゲームを元ににしています。
――ゲーム中、帝国兵は顔が見えないのですが、これもそのまま描かれるのでしょうか?
山本:アニメーション版では、帝国兵も物語に絡んできますので、特に強調するわけではありませんが、顔は見えてます。
――ストーリーはイレーヌ・コラーの『ガリア戦線記』に忠実に進行するのでしょうか?
田中:良い意味で、忠実ではありません。本や歴史は、書く人、見る人によって見え方が異なったり評価が異なったりするものですから。ゲームはイレーヌ・コラーという人物から見たお話ですが、コミックは別人の視点で進みますし、アニメーション版も、ゲームとはまた違った視点で良いかと思います。ガリア戦争の違うアレンジを期待したいです。
山本:ゲームと同様にウェルキンの帰郷から始まって、同じ時間軸で進行しますし、ゲーム内の重要なエピソードの遺漏はありませんが、そこへの導入がアニメーション版では独自になっています。ゲームをプレイされた方でも、「ああ、そういう解釈があるのか」と思ってもらえるような作りですね。
田中:ファルディオがゲームとは違った形で大きくクローズアップされています。ウェルキンとアリシアとファルディオの関係がアニメーション版のひとつの肝になっているのです。ゲームだとファルディオは主な描写から外れたところにいることが多かったのですが、ほかのキャラクターとの関係といったものをアニメーションでは見ることができます。そこが新しいドラマとなっていますね。
――ウェルキンの第7小隊とファルディオの第1小隊以外の小隊は出てくるのでしょうか?
山本:小隊の隊長としてはほかの小隊長も登場するのですが、小隊員としてはあまり……。ポイント、ポイントでは登場させる予定です。
――ゲームでは兵種によって武器が固定されていますが、これはアニメーション版でも踏襲されるのでしょうか? たとえば火炎放射器であるとか……。
山本:ストーリー上必要であれば、登場させますが、なるべく多くの方に見ていただきたいので、残酷に見えてしまうものがあれば、なるべく出さないようにしたいと思っています。
田中:逆に対戦車兵はゲーム中対戦車槍しか装備できず絵が固定されてしまっていたのですが、アニメーションでは、場合によってはライフルで応戦したり、武器をシチュエーションに応じて使い分けています。ドラマとしてみた場合の自然な流れを重視していますね。――ゲームのキャストが非常に豪華ですが、声優陣はゲームと同様なのでしょうか?
山本:おかげさまで、メインキャストについては殆どゲームそのままの形で出来ることになりました。そういったことが奇跡と思えるほどの豪華なキャストです。
田中:帝国軍もゲーム版そのままのキャストですから、大塚周夫さんと大塚明夫さんの実際の親子でのキャスティングといった珍しい状況もそのままです。しかも、アニメーション版はかなりグレゴールとイェーガーの掛け合いがあります。グレゴールが、イェーガーに(女遊びしているのを見て)「お盛んだな」と言うシーンなどちょっとドキドキしてしまいます(笑)。